【読書感想】幸福になるための心理学の知恵「フレーム」について

『フレーム あなたを変える心理学の知恵』

本書は、人の認識の枠組みとなる「フレーム」について書かれています。

フレームとは?なぜフレームが自分を変える知恵になるのか?

著者は、このフレームという概念を「建物に設けた窓」に例えています。

ともすれば、世界を全く客観的に捉えていると思いがちですが、著者は、以下のように述べています。

心理学は、私たちの心がどれほどたくさんの錯覚と過ち、傲慢と偏見、失敗と誤解に満ち満ちているかを赤裸々に見せつけてくれると同時に、このような弱点が「フレーム」という枠で切り取られた心の窓によって生まれることを証明している。

人の心は世界を客観的に見ていない、すなわち、主観という枠組みを出ることができないということを表した比喩が、「建物に設けた窓」という著者の表現です。

世界を建物の外の世界、そして、その建物に一人の人が居ると考えると、その人は建物に設けられた窓から世界を見ることになります。

1階から見るのか、はたまた最上階から景色を眺めるのかでは、見える景色が異なります。

この表現を目にした時、1つの疑問が浮かびました。

1階からではなく、最上階から景色を眺めた方が良いのでしょうか。あるいは、人の物事の見方は千差万別なのだから良し悪しなどはないのでしょうか。

言い換えれば、世界を認識する方法には、望ましいものと、望ましくないものがあるのでしょうか。

この問いに対して、本書は明確に、望ましい物事の捉え方、すなわち選ぶべき「フレーム」を、具体例と共に提示します。

最も分かりやすい例としては、「幸せな人間が持つフレーム」として、有名な「3人のレンガ職人」に似た話が本書の第1章に登場します。

あるところに、清掃員として働く男性がいた。早朝から悪臭とほこりをかぶってゴミを片付け、道路を掃除するという仕事をずっとしてきた人だった。誰が見ても楽な仕事ではないし、人から尊敬されるような職業でもなく、かといって給料が高いわけでもない。なのに、不思議なことに、表情はいつも明るかった。ある日、一人の若者が彼に聞いてみた。大変ではないのか、どうしていつもそうやって幸せそうな表情をしていられるのか。清掃員の答えは傑作だった。

「私は今、地球の片隅を掃除しているんだよ!」

このような物の見方を著者は「上位レベル」のフレームと呼び、物事をもっと身近で些細な問題として捉える「下位レベル」のフレームと区別します。

上位フレームでは、清掃員の仕事を地球の片隅を掃除する意義深いものとして認識し、下位フレームでは、単に道路のゴミを掃除する仕事であると考えます。

このように考えると、上位フレームを持つことが幸せになる道であるということが、すっと納得できます。

しかし、フレームの全てが「上位」「下位」のように分かりやすいものではありません。

さらにやっかいなのは、私たちが気付かないうちに、身の回りに置かれた小さな鏡や、ビジネスバックといったような、およそ人の決定には関係ないようなものまで、フレームを生じさせ、私たちの行動に影響を与え得るのです。

ビジネスバックは「競争フレーム」を、鏡は「良心と道徳」のフレームを誘発します。

具体的には、ビジネスバックを目にすることで、公平性よりも自分の利益を追求する傾向が大きくなり、鏡の前に座ることによって、カンニングのような不正行為をしづらくなるという例が挙げられています。

フレームがこのように周囲の状況に影響されやすい流動的なものであるがゆえに、気付かないうちに自分の行動が左右されてしまうという難しさもある一方で、望ましいフレームを意識的に選ぶ訓練をすることで、自分を変えることすらもできてしまいます。

本書では、様々なフレームが紹介されているのですが、そのなかでも特に心に残ったフレームが、「比較フレーム」です。

他人と自分を比較することで幸福度が下がる、というこのフレームについて、著者は以下のように述べています。

韓国の有名な詩人チョン・ホスンの言葉のように、他人との比較は自分の人生を"くたびれる展示的人生”に変えてしまう。

本書に登場する例の一つに、楽しい家族団欒のひとときが「知り合いはレストランで食べているのに」と考えた途端に、幸せが色あせてしまう、というものがあります。

他人と比較することで、自分の人生が他人の目からどう見えるかという観点ばかりにとらわれてしまう、まさに他者に向けて「展示」された人生になってしまう、というのです。

このように、フレームとは、まさに世界を見る心の窓であり、それゆえに、人生を変える程の影響力を持つものです。

フレームを変えていく訓練は一朝一夕でできるようなものではなく、たゆまぬ努力を必要とするものですが、幸福になるために実践していこう!と、強く決意しました。

同時に、人生を変えられるかもしれない、という希望が湧いてきました。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪